永遠の果実

永遠の果実

                                                糸川草一郎

好きだった 好きで 好きでならなかった

実ればいいと思った

手紙を書いた

下手な字であることはひどいコンプレックスだったが

心を込めた 心を込め 息をつめて書いた

挙句に泣いてしまった

馬鹿に違いなかった

夜空があまりにきれいで ポストをひどく遠く感じた

幾度も引きかえそうと思った やっぱりやめようと思った

その時には郵便局に来ていた

ポストは目の前だった

あの日から ぼくの毎日が変わった

君のひとみがぼくの中心にあり

その明るみと翳りがぼくの一日を決めた

君と目の合うことが増えた

放課後 ふいに二人きりになった日

ぼくは 緑がきれいだねと言った

君は「うふふ、そうね」と言った

話と言えば それだけです

君が結婚すると聞いた

あれからもう 10年もの歳月が経っていた

あの頃 しきりに目が合って

にこにこと笑いあった

そのことだけが ぼくの心にまるで宝石のように

奥まったところでひかりかがやいている

友だちにいろいろ言われたけれど

何も言いかえさなかった

そうだねと ただ笑った

信じられないかもしれないけれど

こんな実らぬ恋が ぼくの心の奥の奥で

果実のように

かたく かたく実っている

あたかも永遠の果実のように

揺るがぬものとして しずかに実っている

20170717

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